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薬剤の効能 (1/2)

抗うつ薬について

2011年の時点で、日本で使える抗うつ薬は16種類あります。
そのうち、うつ病での使用頻度が圧倒的に高いのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。 パロキセチン(パキシル)、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、セルトラリン(ジェイゾロフト)があります。 さらにSNRI(セロトニンーノルアドレナリン再取り込み阻害薬)として、ミルナシプラン(トレドミン)があります。
それに続くのが、旧世代の三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(トリプタノール)など、そして四環系のミアンセリン(テトラミドなど)や、それとは機序の異なるスルピリド(ドグマチールなど)です。 SSRIやSNRIは、セロトニンや、ノルアドレナリンのトランスポーターというポンプをブロックして、神経と神経の間のセロトニン、ノルアドレナリンを増やすことで、セロトニン5−HTIA受容体を刺激して、うつを改善します。
ただし、患者さんによっては、これらの薬がセロトニン受容体を過剰に刺激しすぎることがあるため、セロトニン症候群(下痢や吐き気、硬直・けいれん、興奮・錯乱など)という副作用を起すこともあります。 セロトニン5−HT3受容体は、下痢や吐き気などの消化器症状、5−HT2C受容体は不安焦燥感の増悪、5−HT2A受容体は性機能不全に関係するといわれています。 また、うつ病の患者さんがSSRIを飲むのを急に止めたり飲み忘れたりしたときも、下痢や吐き気、めまいといった中断症候群が出ることがあります。

ミルタザピンについて

さらに最近では、SSRIやSNRIとはまったく違った作用機序でうつを治すミルタザピン(リフレックス、レメロンなど)が出ました。 これはNaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)と呼ばれるものです。
ミルタザピンの作用機序
アドレナリン受容体をブロックして抑制をはずし、神経細胞からのセロトニンの放出を促進しながら、ヒスタミン受容体(HI)とセロトニン受容体(5−HT2C、5−HT2A、51HT3)をブロックするため、セロトニン5−HTIA受容体への刺激を選択的に増強し、不安・焦燥や下痢や嘔吐などの消化器症状、および性機能障害といったSSRIでよく見られる副作用を出さないで抗うつ作用を発揮する作用機序をもっています。
とくにセロトニンについては、
1.セロトニン5−HT3受容体をブロックすることで下痢や嘔吐を抑え、
2.アドレナリン受容体をブロックしてセロトニン放出を促進し、
  セロトニン5−HTIA受容体を刺激し抗うつ作用を発揮して、
3.セロトニン5−HT2Aおよび2C受容体をブロックすることで性機能障害と不安焦燥を出にくく
  する、といわれています。

SSRIによる前頭葉類似症候群

セロトニンとドーパミンの相互作用による感情の平板化
うつ病や躁うつ病の原因は、すべてが解明されているわけではありません。 しかしながら、近年SSRIの多用で、うつ症状が改善される率が約3割ほどである一方、悪化する率も3割ほどあると指摘されるように、SSRIの反応性は個人によって異なることがわかってきています。 処方する医師が、躁うつ病であるのにSSRIを処方し続けたり、いきなり2種類以上のSSRIを大量に併用したり、さらに多種類の抗不安薬も併用すると、躁転や混合状態を引き起こす症例が存在します。
そのひとつが前頭葉類似症候群です。
これは、SSRIを長期に使用した結果起きる無気力状態のことです。正常気分ではあるものの、何事にも無関心で動機づけが起こらず、疲労感があり、精神的に鈍い感じが残る状態で、感情が平板化し、かえってうつがひどくなったように見えます。 この原因は、強力なSSRIを長期間使用したために、セロトニンの増加と相反して、前頭葉や脳幹のドーパミンやノルエピネフリンの活性が低下し、起こると考えられています。
うつ症状の治療中にSSRIを使用し、このような症状があらわれたら、

  • SSRIを減量する
  • 午後の服用にする
  • ノルエピネフリンやドーパミン神経の刺激作用のある薬物(SNRIなど)を用いる

などの処方変更が推奨されています。
また、同じSSRIでもパロキセチン(パキシル)とセルトラリン(ジェイゾロフト)では作用機序が多少異なり、セルトラリンはドーパミン再取り込み阻害作用も伴うため、前頭葉類似症候群が起こりにくいとされていますが、これについても個人差があるようです。

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