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統合失調症/Schizophrenia

統合失調症はどのような経過をたどるか

 統合失調症の経過は、人によってさまざまですが、だいたいのところは図に示したような時間経過をたどっていることがわかっています。図に示された横の軸は時間の経過を示し、縦軸は中央に正常ポイントがあって、そこから上方を陽性症状、下方を陰性症状の度合いを示しています。横軸の時間の経過ですが、初期においては数週間から数カ月という単位で経過しますが、右にいくほど(時間が経過するほど)年単位で長くなります。週や月、年を均一に表現できないため、目盛りは入っていませんが、イメージはできると思います。正常というのは、仕事や日常の作業を、特にトラブルなくこなしていける程度で、安定した精神状態をさしています。この正常ポイントを境に、症状が上下して病気が推移していきます。どのような経過をたどるのか、時間を追ってみてみます。



初期

 初めは、「引きこもり」や「不登校」のような形で徐々に始まり、やがて「独り言」や「奇異なこだわり」を示すようになって、周囲が病気に気付くケースがあります。しかし、いきなり「妄想」や「幻覚」、「興奮」といった陽性症状が発現して、気付く場合もあります。

治療開始

 急性期の陽性症状は、比較的症状が目立っていますが、逆にくすぶってハッキリしないケースもあります。いずれにしても、周囲が異常に気付き、投薬などの治療が始まります。それまで、陽性症状のラインが急速に上昇していたのが、薬を飲み始めたころからラインが下がり始めます。抗精神病薬が陽性症状に効果を現し始めたためです。

揺り戻し

 薬の治療効果で陽性症状は消えますが、しかしこれで統合失調症が治ったわけではありません。それほどこの病気は簡単ではないのです。薬によって、病気のラインは正常値を越して下降し、下方にある陰性症状に入ってしまいました。これは、一種の「揺り戻し」状態といえます。いわゆる消耗期から回復期へと移行しますが、統合失調症はここからが長いのです。患者さんも家族の方も、長い期間にわたって陰性症状とつきあうことになるのです。一般に統合失調症というと、妄想や幻覚などの陽性症状のイメージが強いのですが、症状の長期的な観点からみれば、陰性症状の病気ともいえます。

長い回復期

 陰性症状の回復は、長い時間をかけて正常への道のりをたどり、少しずつ上っていくことになります。この過程は、年単位という長期間で、人によっては20年、30年をかけても不十分というケースもあります。またこの間には、再発(陽性症状の再燃)ということもあります。この長い道筋は、患者さんにとっても家族にとっても、もどかしく思えるかも知れません。また、陰性症状の時の患者さんは、意欲が低下し、集中力が乏しく、人付き合いがうまくいかないことから、はた目からみると「怠け癖」がついている、「甘えている」などの評価を受けてしまうことがあります。こうしたことが、患者さんの「生きづらさ」を増幅させてしまうことに、周囲は理解する必要があります。

 陽性症状の時期は、医療機関による投薬や入院を中心とした対応が行われますが、陰性症状の場合は抗精神病薬の効果があまり期待できないため、地域のケアがより重要となります。ケアには、デイケア、作業所などでのリハビリテーション、訪問看護、家族や周囲の人の支えなどがあります。時間をかけて、家族や周囲が支えアドバイスをしながら、患者さんに自信と常識を身につけてもらうことが、回復への着実な一歩となります。

高齢になると改善しやすい

 大部分の病気は、加齢は最大のリスク因子ですが、統合失調症の場合だけは加齢が有利に働くようです。統合失調症の症状を年齢との関係でみると、20〜30代の患者さんが最も激しい症状を示し、40代になると症状が少し和らぎ、50〜60代になるとかなり症状は軽快します。このように加齢が、病気の改善に有利に働いていることが分かります。たとえば、25歳のとき妄想や幻覚などの陽性症状で無能力状態だった人が、50歳になる頃には見事な回復ぶりを示すことがあります。それは、病気そのものが燃え尽きてしまった様相といえます。

発病の危険因子

 統合失調症はなぜ発病するのか、それを確定する原因は現在もわかっていません。ただ、疫学的研究からみた発病の危険因子については、いくつか考えられます。具体的な因子については次のようなものがあります。

◎年齢
 発病する危険年齢は、だいたい15歳から45歳とされています。女性よりも男性の方が早く発病する傾向にありますが、その理由はわかっていません。思春期以前の発病はまれですが、中には7、8歳で発病した症例も報告されています。女性では高齢になっての発病も若干みられます。
◎性差
 発病率は男性の方が多く、女性の1.4倍という報告があります。有病率では、明らかな男女差はみられないようです。
◎出生時期
 冬季に生まれた人は、他の月に生まれた人より発病率が高い、という研究報告があります。また、出生地の緯度が高いほど影響も大きいようです。
◎婚姻状態
 既婚者よりも、独身者の方が罹患率は高いという報告があります。その危険率は、独身者の方が2.6〜7.2と多くなっています。
◎妊娠や出生合併症
 統合失調症の患者さんにおいては、母親のお腹にいた胎生期に、母親が何らかの感染症や中毒があったり、また出生時に難産だったりした場合において、発病率が高くなっているといわれます。
◎遺伝的背景
 統合失調症の発病率は、一般の人口の約1%とされていますが、両親がともに統合失調症を発病している子どもでは、46%と高くなっています。しかし、遺伝子が同じである一卵性双生児の発病率は48%で100%ではありません。このことから、発病に遺伝が多少かかわっていることは確かですが、それがすべてではなく、環境的な要因などもかかわって発病していることが考えられます。
◎環境やストレス
 統合失調症の発病や再発には、家族の死、家族や職場でのトラブル、失恋、就職、進学などの環境状況が因子となっていることは、これまでも認められていることです。ただ、家庭内の特定の心理的葛藤が、発病と関係があるという化学的な根拠についての報告はありません。
◎経済状態
 海外からの報告では、低所得者層に高い有病率がみられるという研究がある一方で、経済状態が統合失調症の発病率にかかわるという根拠はないとする報告もあり、その因果関係ははっきりしません。
◎薬物乱用
 大麻や覚醒剤、アルコールやタバコ等の乱用が、精神症状に悪影響を及ぼしているという指摘があります。

 このように、統合失調症の発病原因は単純ではなく、いくつもの因子が複合的にからみあい、また病気になりやすい素因のある人に環境によるストレス等が加わって発病しているものと考えられます。






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