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非定型うつ病の症状

<症状・1> 気分反応性

 何か良いことがあれば気分がよくなり、何か嫌なことや悪いことがあれば気分が落ち込んでしまう、といった症状を気分反応性といいます。この気分反応性こそ、非定型うつ病を診断(DSM-W-Rの診断基準)するうえで第一条件の症状となります。気分反応性というのは、その時々の出来事に敏感に反応して気分が揺れ動き、気分が激しくアップダウンすることです。嫌な悪いことがあると、突然、嵐のごとく気分が激しく落ち込んだかと思えば、人に褒められたり楽しいことや嬉しいことがあったりすると、気分がパッと晴れて、途端に元気になるという、その落差が激しいのが特徴です。これが、従来型のうつ病であれば、ほとんど1日中気分が落ち込み、その状態が2週間以上も続き、どんなに楽しいことがあっても気分は晴れません。

 では、非定型うつ病の人の気分が高揚するときはどんな場合かというと、例えば親しい友人とおしゃべりをする、ショッピングに出掛ける、趣味の音楽を楽しむ、欲しかったものが手に入る、海外旅行に行くなど、好きなことや楽しい出来事があれば、気分が良くなって元気になり、体も軽く動き、うつ病が軽快したり消えたりすることもあります。先ほどまで落ち込んでいた人が、手のひらを返したように元気になるので、周囲から見ると仮病ではないかと疑われるほどです。また、自分勝手、わがまま、なまけ者、気分屋、気まぐれなどと思われ、誤解されることも少なくありません。

 一方、気分反応性の逆作用として、気分の沈み込みがあります。会社で嫌なことが起きたり人間関係がまずくなったりすると、てきめんに反応して抑うつ状態になり、体が鉛のように重くなる「鉛様麻痺」になったり、眠くてしかたない「過眠」といった症状を呈します。そして、他人のささいなひと言に過剰に反応して、ひどく落ち込みます。感情が非常に過敏になるため、ちょっとした非難の言葉やプライドを傷つけられたような言葉には、激しく病的に反応します。したがって、非難したり責めたりすることは、いたずらに感情を刺激し、病状を悪化させますので、本人と関わる場合は注意が必要です。実際の臨床の場では、「嫌なことがあった場合に、激しく気分が落ち込む」患者の方が、より多く見られます。しかし、このような気分反応性の症状こそ、正確な診断をつけるためには必要です。一見怠けているように見える患者ですが、決して本人が意識的にやっているのではなく、「病気がそうさせている」と受け止めることが、病気を正しく理解するうえで大事なポイントです。

 気分反応性の具体例を挙げると、激しく気分が落ち込む要因は、「人に注意された(と思い込む)」「人の笑われた(と思い込む)」「仕事上でささいなミスをした」「挨拶をしたのに、相手が返してくれなかった」「占いでよくない結果が出た」などです。一方、気分が晴れる要因は、「褒められた」「友達とおしゃべり」「旅行に行く」「好きなテレビ番組を見る」「買い物にでかける」「好きな趣味をする」「デート」などが挙げられます。

<症状・2> 過眠

 過眠も、非定型うつ病を診断するうえで重要な症状です。定型うつ病では「眠れない」という睡眠障害に悩まされますが、非定型うつ病では「眠り過ぎ」障害に苦しめられます。この逆転した自律神経症状が特徴です。過眠とは、1日10時間以上眠る日が、1週間に3日以上ある場合をいいます。10時間というのは、夜間睡眠と昼寝の時間を合計したものでもよく、また眠っていなくてもベッドに横になっていた時間が10時間以上ある場合でも、判定の基準になります。非定型の眠気は、非難されたりすると(そう思い込む)気分が落ち込み、それに合わせて眠気が強まってきます。また、体が鉛のように重く感じる鉛様麻痺が同時に起きますので、起きていられないために床に入るのです。

 しかし、床に入っても夜中に目が覚めてぐっすり眠れず、熟睡していないため、いくら寝ても寝足りない感じです。また、睡眠を十分とっても昼間も眠くて仕方なく、眠気だけがだらだら続きます。そして、昼夜を問わずうつらうつらと寝て過ごすため、睡眠と覚醒のリズムが崩れ、生活のリズムも崩れ、昼夜逆転の生活となって、日常生活に支障を来すようになります。また、昼夜逆転してしまうと、セロトニンやノルアドレナリンの分泌が悪くなって、通常はうつ病が悪化します。寝てばかりいると自己嫌悪に陥り、憂うつ気分が強まります。さらに、過眠は脳の働きを鈍らせるため、憂うつ気分がさらに増強されてきます。

<症状・3> 過食

 食べる行為は、心理的なものと深く関わっていますので、うつ状態になると食行動にも強く影響してきます。従来型の定型うつ病では、食欲不振になり体重が減少してきますが、非定型うつ病になると、逆に食欲が度をこして起こり、過食して体重が増加してきます。これは、不安な気持ちを食べることによって抑えようとする行動です。何かを食べていないと気持ちが落ち着かない、食べずにはいられない状態なのです。

 過食の定義は、食欲、食事量、体重増加によって認められます。まず食欲は、度を越して食べたいと思う衝動が、週に3日以上あり、また過食したと思うことが週5日以上ある場合です。次に食事量は、うつ状態のときに週に2回以上、度を超して食べることがあるか、またはほとんど1日中食べているか、または1日に何度も間食をしてしまう日が、週に3日以上ある場合です。そして三つ目の体重増加については、約4.5kg以上の体重増加が見られる場合です。以上三つの条件のうち、どれか一つでもあれば過食と判断されます。

 非定型のうつ病になると、ほとんどの人が甘いものへの欲求が強くなります。まんじゅう、ケーキ、チョコレート、ドーナッツ、クッキーなどの甘いものを無性に食べたくなり、次から次へとむちゃ食いをします。糖分には、抑うつ感を和らげる作用があると言われ、インスリンが分泌されて、脳内のセロトニンが増加し、抗うつ薬を飲んだのと同じ効果が見られるという説もあります。中でも、チョコレートは脳内の神経伝達物質に作用し、気分をよくするとも考えられています。しかし、甘いものを食べて気分がよくなるのは一時的なもので、食べ過ぎによって体重の増加を招きます。そして、太ってしまったことで自己嫌悪に陥り、気分がまた落ち込んでいきます。ただ、過食しても過食症のように、食べた物を喉に指を入れて吐いたり、下剤を大量に飲んで嘔吐したりするような異常行動はほとんど見られません。

<症状・4> 鉛様麻痺

 この鉛様麻痺も、非定型うつ病を診断するうえで基本となる重要な症状です。従来型のうつ病にも疲れやすく倦怠感は見られますが、非定型うつ病になるとこの症状がさらに進行し、度合いが強くなった状態です。まるで手足に鉛が入っているかのように体が重くなり、立ち上がることすら出来ないほど、全身が極度にだるくなります。これは、運動や労働などからくる肉体的な疲労とは違って、何か嫌なことがあって、気分が落ち込んだ時に起こりやすくなります。この鉛様麻痺は「神経性疲労」による症状で、運動をつかさどる前脳の機能が不足しているために起こり、これを改善するには、動かしたくない体を意識的に動かす努力が必要です。自分の体をいたわって動かさないと、逆効果でますます動かすことが億劫になり、うつ状態も悪化します。

 朝起きようとしたらどうにも起き上がれず、会社や学校を休んでしまうこともしばしばです。自分の意思ではどうにもならないところで体が反応し、体が動かなくなっているのです。周囲の目には、仕事や勉強がいやだから「怠けている」ように見えますが、本人はどうにもならないのです。あまりのだるさに他に身体的な病気があるのではないかと疑って、病院を受診しますが、いくら検査をしても「異常なし」の結果です。自分でも心の病とは思わないので、受診するのは精神科ではなくて一般の医療機関に行くため、どうしても見過ごされてしまいます。ときには、「慢性疲労症候群」と診断されることもあります。慢性疲労症候群も非定型うつ病も、同じように強い倦怠感と疲労感を訴えますので、鑑別が困難であることも確かです。ただ、心の病気と気付かずに、治療が遅れてしまうことが問題です。

<症状・5> 拒絶過敏性

 普通誰でも、人から批判されたり拒絶されたりすると、多少なりとも心に傷がついて落ち込むことがあります。しかし、非定型うつ病の人は、その傷のつきかたが強く激しく極端にでるのが特徴です。たとえば、周囲の人のちょっとしたひと言で、激しく落ち込んで何日も寝込んだり、逆に相手に対して攻撃的になったりします。また、褒めたつもりで言った言葉を、そのまま受け取らず、皮肉を言われたと思い込んで、ひどく落ち込んだりします。また、会社で上司から、自分が作った企画書に対して修正が出されると、能力を全否定されたと思い、腹をたてて逆ギレしたり、翌日から会社を休んだりします。このように、他人の言動に対して、敏感に反応し、ひどく落ち込んだり激怒したり、攻撃的になったりして、人間関係や社会生活に影響がでるような症状を「拒絶過敏性」といいます。

 拒絶過敏性とは、他人からの侮辱、軽視、批判に対して極度に敏感になる症状ですが、そのもとにあるものは対人恐怖(自分の外見や能力を低く見られることへの恐怖)や、高いプライド(他人の目を気にする自己愛性)が存在しているものと考えられます。しかし、この侮辱、軽視、批判といっても、これはあくまでも本人がそのように受け取っているだけで、実際はごく些細なできごとが多いのです。この些細なこととはいえ、本人にすれば自分を拒否し批判したとしてとらえ、ときには被害妄想的に受け止めて、病的に反応するのです。

 こうした症状は、当然周りの人達との間にトラブルを引き起こし、家族、上司、同僚、友人、恋人などとの人間関係にヒビが入って、社会生活に支障がでてきます。結果、職場や学校を休んで引きこもり、友達も恋人もつくらなくなります。また攻撃に転じると、相手とけんかや口論をしたりして、絶交状態になったりします。

 この拒絶過敏性による症状は、「境界性パーソナリティ障害」の症状とよく似ているため、臨床においてはしばしば診断に迷うところです。いずれにしても、治療を進めていくなかで、非定型うつ病なのかパーソナリティ障害なのかを、十分に見極める必要があります。中には、双方が合併しているケースもあるので、慎重に診断をすすめることになります。

<症状・6> 不安・抑うつ発作

 従来型の定型うつ病の憂うつ感は、朝強く現れて夕方には和らいできますが、非定型うつ病では、反対に夕方から夜にかけて、それも不意に不安や抑うつ発作が現れるのが特徴です。発作が起きると、精神状態ががらりと変わって別人のような行動をとります。症状はいろいろありますが、典型的なものは以下のようなものです。

《身体症状》

 まず、理由もなく涙をボロボロと流します。落涙症状です。

《精神症状》

 落涙症状についで、精神症状が現れます。まず自己れんびん憐憫症状として、「誰も私を理解してくれない」「なぜ私だけがこんな病気になったのか」「私は世界一不幸ものだ」「私だけ取り残された」という自分を哀れむ感情に襲われます。次に、「私に比べたら、あの人はすごく恵まれている」といった嫉妬や羨望の感情に責められます。また、将来を悲観して、過剰に絶望したり強い焦燥感に襲われたりすることもあります。

《発作への対処行動》

 落ち込むだけなら、まだ対処行動は少ないのですが、不安や焦燥が激しい人は、それを紛らわすための対処行動も激しさを増します。過剰な喫煙や飲酒、むちゃ食い、器物を壊す、リストカットやタバコの火を自分に押し当てる自傷行為、異性への刹那的な接近、また薬物の大量摂取、自殺企図などです。このように、激しい情動が前面にでると、すさまじいものになります。周囲の人は、対処行動を責めるのでなく、病気からくる苦しみを理解して患者を支えることが、病状悪化を防ぐことにもなります。


<症状・7> 怒り発作

 非定型うつ病の拒絶過敏性が、爆発的な怒りとなって現れた症状が、この「怒り発作」です。いわゆる「キレる」状態になって、大声で叫んだり、体を震わせて非難したり、手当たりしだいに物を壊したりして、手が付けられなくなります。この発作が起きたとき、家族や周囲の人は、暴れている患者を言動で制したりすると、ますます刺激を与えることになります。理不尽なことを言ったことに対し、理屈で反論したりすると、ますます興奮してきますので、決して対等に渡り合わないことが重要です。アドバイスするにしても、発作が治まり、気持ちが落ち着いてきたころを見計らって、客観的な意見を述べる程度にします。やさしく耳を傾けることが大事です。

 患者の多くは、怒り発作が治まると、たいていは「悪いことをした」「すまないことをした」と、激しい自己嫌悪に陥り、うつ状態が悪化することになります。キレたのは、本来の自分ではないとも感じています。こうした怒り発作は、全ての患者に起こるわけではありません。怒り発作がときどき起こるようでしたら、専門医に相談して、感情調整薬や鎮静薬を処方してもらう方法もあります。




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